印刷(PDF/219KB)はこちらから 2026年06月02日 研究開発
米国臨床腫瘍学会(ASCO)2026における抗がん剤として開発中の新規リポソーム型CHK1阻害剤「SMP-3124LP」に関する臨床データ発表のお知らせ
住友ファーマ株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:木村 徹)の米国子会社であるSumitomo Pharma America, Inc.は、米国臨床腫瘍学会(ASCO:American Society of Clinical Oncology)の2026年年次総会(開催時期:5月29日~6月2日、開催場所:米国シカゴ)において、抗がん剤として開発中の選択的CHK1(Checkpoint kinase 1)阻害剤をPEG(ポリエチレングリコール)で修飾したリポソームに封入した注射剤(開発コード:SMP-3124LP:以下「本剤」)に関する初の臨床データを発表しましたので、お知らせします。
今回、結果を発表したフェーズ1/2試験(以下「本試験」)は、本剤のヒト初回投与試験(first-in-human)として、現在進行中であり、フェーズ1パートは、2026年4月時点で進行固形がん患者61例を対象としています。本試験の患者背景は前治療歴が多く、37.7%が5ライン以上の治療歴を有していました。本剤は20、40、60、90 mg/m2の4用量を2週間ごとに静脈内投与し、抗腫瘍活性を示唆する有望な結果が示されました。
有効性評価が可能な56例において、病勢コントロール率は48.2%、固形がんの治療効果判定基準(RECIST v1.1)に基づく部分奏効が5例、安定病変が22例でした。治療が困難ながん種にも効果を示しており、プラチナ抵抗性卵巣がん(PROC)2例、肛門扁平上皮がん(SCCA)2例、および予後不良と関連するFBXW7変異を有する大腸がん1例が部分奏効と判定されました。さらに、別のPROC患者2例では腫瘍縮小率20%以上の安定病変が認められ、そのうち1例では卵巣がんの腫瘍マーカーであるCA-125が88%減少しました。
本試験の予備的な結果では、本剤は、概ね良好な忍容性と管理可能な安全性プロファイルを示し、低用量(20および40 mg/m2)では用量制限毒性(DLT)は認められませんでした。一方で、高用量(60および90 mg/m2)では、Grade 4の血小板減少やGrade 3の発熱性好中球減少等のDLTが認められましたが、これらの血液学的有害事象は概ね一過性であり、治療中止には至りませんでした。本剤の注入に伴う反応(IRR)は41%の患者で報告されましたが、すべてGrade 1または2であり、支持療法や投与速度の調整により管理可能でした。
また、薬物動態では、長い半減期(24~28時間)や低い分布容積(2.00~2.67 L)が確認され、リポソーム製剤の特性と整合する結果が得られるとともに、全用量群で、用量比例的な曝露量の増加も確認されました。これらの結果は、本剤がリポソームナノ粒子製剤化により、正常組織への曝露を抑えつつ腫瘍への薬剤移行を最適化できる可能性を示唆しています。
CHK1はDNA損傷応答において重要な役割を担う酵素であり、高いDNA複製ストレス下にあるがん細胞の生存を支えるDNA修復に関与しています。CHK1阻害は長年、創薬ターゲットとして注目されてきましたが、従来のCHK1阻害剤は、骨髄毒性が高く、臨床応用に課題がありました。本剤はリポソームナノ粒子技術で治療域の拡大を図っており、治療選択肢が限られたがん患者さんに対しても、CHK1阻害剤の課題を克服して治療に貢献できることを目指しています。
ご参考
SMP-3124LP について
本剤は選択的CHK1(Checkpoint kinase 1)阻害剤をPEG(ポリエチレングリコール)で修飾したリポソームに封入した注射剤で、CHK1はDNA 損傷応答によって活性化され、細胞周期を停止し、DNA修復を誘導するセリン/スレオニンキナーゼです。CHK1阻害は高い複製ストレスを有するがん細胞に対し更なるDNA損傷をもたらし、細胞死を誘導します。本剤はリポソームナノ粒子製剤化によって薬剤の体内動態を変化させ、薬効を増強し副作用を低減することが期待されています。
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