印刷(PDF/235KB)はこちらから 2026年02月20日 研究開発
愛媛大学と住友ファーマによる新規マルチステージマラリアワクチンの共同研究開始およびGHIT Fundからの助成決定
国立大学法人愛媛大学プロテオサイエンスセンター(センター長:澤崎 達也、以下「愛媛大学」)と住友ファーマ株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:木村 徹、以下「住友ファーマ」)は、このたび、新規マルチステージマラリアワクチンの共同研究を開始しました。また、米国PATH、Statens Serum Institut (デンマーク、以下「SSI」)およびコペンハーゲン大学(デンマーク)と5者共同で進めている「PfCSPおよびPfRipr5に基づく新規マルチステージマラリアワクチン候補の開発プロジェクト」(以下「本プロジェクト」)が、このたび、公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(日本、Global Health Innovative Technology Fund、以下「GHIT Fund」)の標的研究プログラムにおける助成案件に選定されましたので、あわせてお知らせします。
愛媛大学と住友ファーマは、マラリア感染阻止ワクチン、マラリア伝搬阻止ワクチン、およびマラリア発病阻止ワクチンについても共同研究を実施しています。これらの研究は、GHIT Fundの助成案件として選定されてきており、それぞれ異なる開発段階・研究目的に基づき、段階的に実施されてきたものです。
本プロジェクトの対象となるワクチン候補製剤(以下「本剤」)は、SSIが見出した蚊から感染する際の肝臓期マラリア原虫抗原(PfCSP)と愛媛大学と住友ファーマの共同研究で見出された新規赤血球期マラリアワクチン抗原(PfRipr5)との両方を提示したナノ粒子と、住友ファーマが持つ新規アジュバント(TLR7アジュバント:DSP-0546E)で構成されており、マラリア原虫の蚊からヒトへの感染および赤血球への侵入(発病)をマルチステージで阻止することが期待されている候補製剤です。本剤が上市されれば、新規マルチステージマラリアワクチンとして、流行地におけるマラリア対策に貢献する可能性があります。本プロジェクトは、2025年10月より2年間で本剤の作製および非臨床Proof of Concept(POC)取得を目指します。
マラリアは、蚊で媒介される寄生虫病で、患者数は2005年頃から減少傾向にありましたが、2015年頃から再び増加に転じ、さらに新型コロナウイルスによるパンデミック以降も年々増加し、依然として世界で2.6億人以上がマラリアに罹り、死亡者数も60万人に及んでいます(出典「World Malaria Report 2025」)。ワクチン開発がマラリア対策の切り札として期待され、これまで40年間以上取り組まれてきましたが、2021年に世界保健機関(WHO)から推奨された蚊からヒトへの感染を防ぐ第一世代のマラリアワクチンRTS,S/AS01による有効性は約30%と低く、また2023年には類似のR21/Matrix-MワクチンもWHOから推奨されましたが、より有効な次世代マラリアワクチンが切望されています。
愛媛大学は、本プロジェクトを成功させることにより、画期的な新規マルチステージマラリアワクチンの実現に向けた開発を推進し、グローバルヘルスの最重要課題の一つであるマラリア対策に貢献できることを期待しています。
住友ファーマは、愛媛大学および住友ファーマの共同研究にて得られた新規マラリアワクチン抗原および住友ファーマの持つ革新的な免疫アジュバント技術を活用して、新規マルチステージマラリアワクチンの研究開発を行うことにより、グローバルヘルスに貢献することを目指します。
ご参考
両者のこれまでの共同研究について
愛媛大学と住友ファーマによるこれまでの共同研究の詳細は、以下のプレスリリースをご覧ください。
- マラリア発病阻止ワクチン(2019年4月9日)
- PfRipr5 熱帯熱マラリア発病阻止ワクチンの作用メカニズムを解明 ―マラリアワクチン開発を加速―(2020年4月21日)
- マラリア伝搬阻止ワクチン(2020年4月3日)
- マラリア感染阻止ワクチン(2021年3月31日)
- マラリア発病阻止ワクチン(2023年9月27日)
PfRipr5について
PfRipr5は、愛媛大学と住友ファーマの共同研究によって見出された、熱帯熱マラリア原虫に発現するタンパク質Rh5 interacting protein(PfRipr)の部分アミノ酸配列を有する新規マラリア発病阻止ワクチン抗原候補です。これまでのマラリア発病阻止ワクチン候補は、抗原多型によって有効性が示されませんでしたが、PfRipr5はマラリア流行地分離株において高度に保存されているために有効性が期待されることが愛媛大学の研究によって明らかにされています。
TLR7アジュバント(DSP-0546E)について
ウイルス由来のRNAを感知して自然免疫応答を引き起こすToll様受容体の一つであるTLR7を活性化させる物質です。抗原に添加することによって免疫原性を高める免疫増強作用を有します。
公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金 (GHIT Fund:ジーヒット・ファンド)
公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)は、日本政府(外務省、厚生労働省)、製薬企業などの民間企業、ゲイツ財団、ウェルカム、国連開発計画が参画する国際的な官民パートナーシップです。世界の最貧困層の健康を脅かすマラリア、結核、顧みられない熱帯病(NTDs)などの感染症と闘うための新薬開発への投資を行っています。治療薬、ワクチン、診断薬を開発するために、GHIT Fundは日本の製薬企業、大学、研究機関の製品開発への参画と、海外の機関との連携を促進しています。詳しくは、https://www.ghitfund.org/jpをご覧ください。
PATH
PATHは、公的機関・企業・投資家等と連携して、世界で最も差し迫った健康問題を解決することにより、健康格差の縮小を目指す国際組織です。PATHは科学・健康・経済・技術・患者支援等の多様な専門性により、ワクチンや医薬品、医療機器、診断機器など、世界中の医療システムを強化するための革新的なソリューションの発展に努めています。詳細については、https://www.path.org/をご覧ください。
Statens Serum Institut (SSI:デンマーク国立血清研究所)
SSIは、デンマーク保健省の所管機関であり、感染症および生物学的脅威への備えを確保するとともに、先天性疾患の管理を担うことを主たる使命としています。詳しくは、https://en.ssi.dk/をご覧ください。
コペンハーゲン大学
1479年に設立されたデンマーク最大の教育・研究機関であり、約36,500人の学生と約5,000人の研究者を擁しています。国際的な研究・学習環境を有し、同大学の研究者にはこれまでに10件のノーベル賞が授与されています。
以上
報道関係者の皆さまからのお問い合わせ