Message on Financial Strategy and Priorities 財務責任者メッセージ

2026年9月30日現在

代表取締役 副社長執行役員 酒井 基行
代表取締役 副社長執行役員
酒井 基行

経営企画、経理統括、渉外、コーポレートガバナンス、 コーポレートコミュニケーション、IT&データアナリティクス担当

再建を支えた財務から、成長を創る財務へ

代表取締役 副社長執行役員

酒井 基行

経営企画、経理統括、渉外、コーポレートガバナンス、
コーポレートコミュニケーション、IT&データアナリティクス担当

再建を支えた財務から、成長を創る財務へ

財務基盤の再構築

2023年度、当社は収益がコストを下回る構造的な課題 が顕在化し、大幅な業績悪化に直面しました。巨額の損失計 上により株主資本は大きく毀損し、自己資本比率も大幅に 低下しました。加えて、有利子負債の負担が重くなったこと で、資金調達力にも制約が生じ、財務基盤の再構築が喫緊 の経営課題となりました。

この局面において、損益面では安定的に黒字を創出でき る収益構造への転換、財務面では過剰債務の削減と自己資 本の充実を最優先課題と位置づけました。財務体質の改善 は、単に財務指標を回復させるためではなく、当社が将来に 向けた成長投資を継続できる経営基盤を取り戻すための前 提であると考えています。

その実現に向けて、当社は事業規模とコスト構造の適正 化を徹底して進めました。研究開発領域における選択と集 中、人員体制の見直し、経費削減などの合理化策に加え、ア ジア事業の売却を含む事業ポートフォリオの見直し、非中核 資産等の売却を実行し、有利子負債の削減と財務基盤の改 善に取り組みました。

これらの施策はいずれも容易な判断ではありませんでし たが、当社が持続的に事業を継続し、将来の成長機会を確 保するためには不可欠な取組でした。財務基盤の再構築と は、守りを固める取組にとどまらず、次の成長に向けた経営 の選択肢を取り戻すプロセスであったと認識しています。

財務規律と成長投資の両立

「Reboot 2027」では、安定的な黒字体質の実現と有利子負債の削減を重要な目標に掲げ、財務体質の改善を着実 に進めました。その進捗を踏まえ、当社は再建フェーズから 再成長フェーズへと移行する道筋を描きつつあります。一方 で、合理化のみによって企業の持続的成長を実現すること はできません。財務体質の改善は経営の目的そのものでは なく、価値創造サイクルを再び力強く回すための手段です。 製薬企業として競争力を維持・向上させるには、財務上許容 される範囲を慎重に見極めながら、成長投資を継続すること が不可欠です。

次の段階である「Boost 2028」では、財務規律を維持し ながら研究開発等の成長投資を拡充し、成長の加速を目指 します。

また、投資判断においては、投資額だけでなくそのタイミ ングも極めて重要です。必要な投資を過度に先送りすれば、 競合他社との差が拡大し、将来的に挽回が困難となる可能 性があります。一方、臨床開発には不確実性が伴い、主力製 品への依存リスクや市場環境、競合状況の変化も十分に考 慮する必要があります。

したがって、財務責任者として重視しているのは、成長投 資の規模とタイミングを常に慎重に見極めることです。成長 投資を継続することと財務健全性を維持すること、この二つ を両立させるため、「Boost 2028」ではROEや自己資本比 率を主要な経営管理指標とし、資本効率と財務健全性の双 方を意識した意思決定を徹底していきます。

増資による財務的自由度の確保

公募増資は、財務上の制約を軽減し、再成長に必要な財 務的自由度を確保するための重要な資本政策です。その主 な目的は、「Boost 2028」で掲げる成長投資の機会を確実 に捉え、必要な局面で機動的な意思決定を可能とする財務 基盤を整備することでした。

ロイバント社との戦略的提携に伴う事業買収に際して、劣 後債の発行や銀行借入により資金を確保したことは、当時 の状況において合理的な判断でした。しかし、その後、買収 事業の収益力に関する見通しが悪化し、のれんや無形資産 の減損による巨額損失を計上したことで財務上の制約が強 まり、劣後債のリファイナンスの見通しが不透明となりまし た。さらに、銀行借入についても親会社保証が必要となり、 これらの要因が当社の資金調達の自由度を大きく低下させ ました。増資は、こうした課題を早期に解消するための現実 的かつ重要な選択でした。

一方で、増資は株式価値の希薄化要因となります。しか し、中長期的には、必要な成長投資を適切なタイミングで実 行し、将来の収益基盤を強化することが株主価値の向上に つながると考えています。重要なのは、調達した資金を規律 ある形で配分し、その成果を企業価値向上として着実に示し ていくことです。

持続的成長に向けた価値創造サイクル

当社が目指す持続的成長の基盤は、投資と収益の循環に あります。既存事業で創出した資金を、将来の収益源となる 研究開発や事業機会へ投資し、その成果を次の収益創出へ とつなげる。この循環を継続的に機能させることが、価値創 造サイクルの再構築につながります。

そのためには、利益、資本効率、財務健全性のバランスを 踏まえ、成長投資を継続的かつ適時に実行する必要があり ます。「Boost 2028」では、資本効率を示す指標としてROE を、財務健全性を示す指標として自己資本比率を重視して います。これらの指標を踏まえ、成長投資と財務規律の両立 を経営管理の中心に据えていきます。

成長投資については、当社の強みを発揮できる領域およ び市場に重点的に配分することが重要です。限られた経営 資源を分散させるのではなく、競争優位を発揮でき、将来の 企業価値向上に結びつくテーマに集中して投資します。財務 は、成長機会を的確に捉える一方で、過度なリスクを抑制す る役割を担い、規律ある投資判断を支えていきます。

ステークホルダーの皆様へ

当社は、再建を経て、再成長に向けた新たな段階に入りつ つあります。今後重要となるのは、改善した財務基盤を活用 し、企業価値向上につながる成長機会へ適切に資金を配分 することです。財務責任者として、成長投資と財務健全性の 均衡を維持しながら、実行可能性のある目標を掲げ、その進 捗と成果を誠実に示していきます。

株主の皆様への利益還元は、重要な経営課題であると認 識しています。現時点では、「Boost 2028」の実行に向けた 成長投資を優先していますが、その目的は、将来にわたり持 続的に資金を創出できる収益基盤を強化することにありま す。成長投資により収益基盤を強化し、その成果から生み出 される資金を再投資と株主還元に適切に配分し、価値創造 サイクルを持続的に回し続けることで、中長期的な企業価値 の向上を目指していきます。